
2026年は、中小企業にとってデジタル活用の重要度がさらに高まる一年になるとみられています。制度改正や人手不足、AI 技術の普及などが重なり、「今のやり方のままでは対応が難しくなる」場面が増えそうです。
では、中小企業は何を準備すればよいのでしょうか。
2026年までに取り組んでおきたい5つのポイントをまとめました。
Point1:制度対応に向けた“実務のデジタル化準備”を進める
2026年に向けて、次のような制度の影響が強まると考えられています。
電子帳簿保存法の定着と監督強化
保存方法の電子化が広まり、紙中心の運用では対応しづらいケースが増える可能性があります。
インボイス制度の本格運用
免税・猶予が終了していく中で、請求や経理処理のデジタル化が進むことが想定されます。
人手不足が一段と深刻化
労働人口の減少が続き、限られた人数で業務を回すためのデジタル化へのニーズが高まる傾向があります。
このため、「紙中心・手作業中心の実務」が負担になりやすくなります。
■今からの準備ポイント
- 領収書・請求書の管理方法の見直し
- 会計・経理・請求フローのデジタル化
- 電子帳簿保存法に対応した運用ルール作成
制度の変更に合わせて“どこをデジタル化すれば楽になるか”を整理しておくことが有効です。
※出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答」、国税庁「特集 インボイス制度」
Point2:紙・Excel の業務棚卸しを行い“デジタル化の優先順位”を決める
DX の出発点となるのが、紙やExcelで止まっている業務の棚卸しです。
- 発注
- 勤怠
- 日報
- 在庫
- 顧客管理
- 請求管理
こうした業務を一覧化してみると、「どこからデジタル化すると効果が大きいか」が見えやすくなります。
■今からの準備ポイント
- 全業務を書き出す
- 手作業が多いものに印をつける
- すぐに改善できるものから着手する
棚卸しをしておくと、AI・補助金・スマホDXといった選択肢が比較しやすくなります。
Point3:自社業務の中で“AIが担える部分”を整理する
生成AIは2025年に一気に普及し、2026年には業務ツールに標準搭載されるケースが増えるとみられます。
- 音声 → テキスト化
- 写真 → 情報抽出
- 定型業務の自動作成
- 問い合わせのAIチャット
- マニュアル自動生成
これらは「専門知識なしで使えるAI」として広がる可能性があります。
■今からの準備ポイント
- AIで代替できそうな業務を洗い出す
- 生成AIに試しに業務をさせてみる
- 社内の“AI活用ルール”の簡易版を作る
AI活用は“まず試してみる”ことで適用範囲が自然と見えてきます。
※出典:総務省「情報通信白書」、経済産業省「AI活用ガイドライン」
Point4:省力化・自動化を前提に“補助金活用の投資計画”を立てる
経済産業省の概算要求では、2026年度に向けて次のような方針が示されています。
- 中小企業の省力化・生産性向上の重点化
- 自動化・デジタルツールの導入支援の拡充
- AI を含む高度なデジタル活用への支援強化
- 小規模事業者のデジタル化支援の継続
深刻な人手不足を背景に、“人を増やすより省力化” という方向がより強まりつつあります。
■今からの準備ポイント
- 来年必要になりそうなデジタル投資をリスト化
- 補助金を使うか、自己投資にするか検討
- 1〜3年の DX 計画を簡易に作っておく
補助金は「準備した会社」が有利になるため、早めの計画が効果的です。
Point5:“スマホ中心の現場DX”を想定したツール選定を始める
2026年の現場DXでは、パソコンよりもスマホが中心になると予測されています。
- LINE予約〜会計〜顧客管理の連動
- 在庫・勤怠・発注などのスマホ入力
- 作業手順書の動画化
- AI予約や自動応答の普及
- 導入しやすいIoTの低価格化
高額なシステムを導入しなくても、スマホだけで現場が回るケースが増えています。
■今からの準備ポイント
- 現場で“スマホでできる仕事”を洗い出す
- スマホ対応のツールを優先して比較
- スタッフが使いやすい運用方法を検討
スマホは“最も導入コストが低いDX”なので、小規模企業でも取り組みやすい領域です。
※出典:2024年版「中小企業白書」 第7節 DX(デジタル・トランスフォーメーション)
まとめ
制度・技術・人手不足の3つが重なるなかで、「現場に合った小さなデジタル化」の積み重ねが大切になりそうです。
制度対応・AI活用・補助金計画・スマホDX・業務棚卸しという流れを整えておくことで、2026年のDXに取り組みやすくなると考えられます。
