ブラック企業からの脱却!人を大切にすることを追求してたどり着いたDX #後編

2025年10月3日

株式会社 四日市事務機センター(YONJIMグループ)
代表取締役 佐野 智成氏

取材:2025年8月22日

株式会社 四日市事務機センター(YONJIMグループ)
代表取締役 佐野 智成氏

「うちの会社、スーパーブラックだな」働き方革命の始まり

優秀な営業マンを失った夜、コメダ珈琲での決意

―社長に就任されてから、会社はどのように変化していきましたか?

売上は順調に上がっていきましたが、それに伴って仕事量も増え、会社はどんどんブラック企業になっていきました。

そんな中、11年ほど前に、非常に優秀な営業マンが会社を去ることになりました。力も鍛えられ、三重県への愛情が深まったのもこの頃です。

当時の事務所

ー何が原因だったのでしょうか?

ご家族の病気が理由でした。奥様が病気で、何かあった時にすぐ帰れる会社に転職したいと、辞めていきました。

誰にも相談できなかった彼の状況を知った時、「スーパーブラックだな、うちの会社は」と痛感しました。彼の働き方を、会社として支えてあげられなかったんです。

その日の夜、役員とコメダ珈琲で話している時に「これ、社長しか変えられないですよね」と言われました。その通りだと思い、その時から働き方を変える計画を立て始めたんです。

セールスフォース×iPad―三重県で最も早かったDXの挑戦

―働き方を変えるために、まず何から着手されたのですか?

実は、働き方改革を決意する前からDXの土台はありました。私が社長になった2009年に、セールスフォース(Salesforce)を導入したのが始まりです。

当時はまだ手作業とExcel、Wordが中心で、非常に非効率でした。セールスフォースは高価でしたが、他社が躊躇するからこそ「やる価値がある」と決断しました。

― 導入時に工夫されたことはありますか?

セールスフォースは当時としては画期的で、お客様の商談状況はもちろん、車両管理や業務予定に至るまで、あらゆる情報を一元管理できるように自分たちでカスタマイズしました。

翌年にiPadが登場して、すぐにセールスフォースと連携。三重県では一番早かったと思います。

社員は場所を選ばずにどこからでもデータの確認や入力ができるようになりました。

20日の仕事を19日で―全社一丸の効率化プロジェクト

―本格的な働き方改革は、どのように進められたのですか? 

2019年に、全社を挙げたプロジェクトを立ち上げました。「有給を絶対に取れる会社にしよう」ということで、「20日間でやっていた仕事を19日間で終わらせる」を目標に、全員で意見を出し合ったんです。

在庫管理の方法を見直したり、棚卸しのやり方を変えたり。とにかく時間がかかっていた業務を徹底的に見直し、一気にクラウド化を進めました。

結果として、長時間労働の体質からの脱却に直結しました。

126の制度で築く「チームファミリーサティスファクション」

「禁煙手当」から始まった福利厚生革命

―貴社は126もの福利厚生制度があると伺いました。どのようなきっかけで増えていったのですか?

最初の制度は、社長になった16年前に作った「禁煙手当」です。

その後、ある同業他社がホワイト企業としてテレビで紹介されているのを見て、役員の一人が「いいなあ、働き方がいっぱいあって」と言ったんです。

そこから、今まで見聞きした他社の良い取り組みを全部リストアップして、自社で取り入れるところから始めました。

1,260円の「ゴールドラッシュ」が生む職場の絆

例えば「ゴールドラッシュ」という制度があります。これは社内仮想通貨のようなもので、全社員が毎月1,260円分のコインを持ちます。

そして、感謝を伝えたい相手に「ありがとうメール」と共にコインを送ることができるんです。導入から8年となりますが、2024年は年間3,000投稿を超えております。

「〇〇さん、資料作成ありがとう!」といったメッセージがコイン付きで届く。誰がどれだけコインを送ったか、もらったかが全員に見えるようになっています。これ、もらうと結構嬉しいんですよ。

この制度も、デジタル基盤があったからこそ生まれました。

洗濯機の乾燥機まで―社員の声に耳を傾ける経営

―制度はどのように作られていくのですか?

基本的には社員からの提案です。年間目標を立てる際に、改善案として出してもらい、良いものを採用しています。

例えば、「洗濯機に乾燥機をつけてほしい」という自分では気が付かないことなど、意見があれば、すぐに設置しました。確かに干す手間や時間が短縮されました。言ってもらわないと分からないことって、たくさんありますからね。

こうした取り組みの根底にあるのは、先ほどお話しした社員の退職経験から生まれた「社員の家族を守らなければいけない」という思いです。

会社の仲間と、その家族が満足する会社をみんなで作っていこうというのが、この「チームファミリーサティスファクション(TFS活動)」の理念です。

生成AIで描く宇宙―デジタル化の先にある未来

「コピー機を宇宙服で直しに行く」ホームページ革新

―現在、特に力を入れている新しい取り組みはありますか? 

11月にリニューアルするホームページですね。これがめちゃくちゃ面白いんですよ。

リニューアル後のホームページ

宇宙をテーマに、画像や動画を生成AIで作っています。

「コピー機を宇宙服で直しに行く」というような無茶な指示で画像を作ったり。ヘッダーの画像は全部僕が発想して、グループ会社に作ってもらっています。

30ページ以上あるんですが、全ての画像のストーリーが繋がっているという、かなりこだわった作りになっています。

県内最速!全グループ、全社員への生成AI導入と活用の最前線

―生成AIは全社員で導入されているそうですね。

はい。普通のChatGPTのようなものですが、セキュリティが担保されたプロ活用版を全グループ、全社員に導入しています。おそらく県内ではまだほとんどの会社が全社員には導入していないと思います。

サーバーを経由しないので情報漏洩の心配がなく、契約書の確認や文章構成のチェックなど、様々な業務で活用しています。

使う人と使わない人で確実に差が出るので、社員のITスキル向上のためにも重要だと考えています。ITスキルが高い人を評価するインセンティブも準備しているところです。

累計900社が見学に訪れる「学びの場」としての会社

―貴社の取り組みは、社外からも注目されているようですね。

この4年間で、全国から累計900社が見学に来られました。私たちのDXや働き方改革の事例を体験してもらい、自社に持ち帰っていただく。

三重県警とコラボして、セキュリティセミナーとオフィス見学をセットで開催することもあります。

自分たちの取り組みが、他社の成長のきっかけになるのは非常に嬉しいですし、そこから新しいビジネスが生まれることもあります。

オフィス見学の様子

三重県を愛し、三重県と共に成長する経営哲学

M&Aで守る地域雇用「他県に取られるくらいなら」

―近年はM&Aも積極的に行われていると伺いました。

はい、伊賀の会社などを吸収合併しました。一番の理由は、他県の会社に買収されそうになっていたからです。

伊賀の会社は奈良の会社に、ホームページ会社は名古屋の会社に買収されそうになっていました。もし他県の会社が入ってくれば、三重県の雇用も税収も、全て県外に流れてしまいます。

それなら「うちがやります」と。技術力はあるけど営業力がない会社と組むことで、三重県のお客様により良いサービスを提供できますし、それが三重県のためになると信じています。

同じ志の仲間を増やし続ける使命

―3年後、10年後、どのような会社でありたいですか? 

同じ志を持つ仲間を、一人でも多く増やしていきたいです。今やっていることは間違っていないと信じているので、そこに共感し、協力してくれる仲間を集めたい。

そして、「このチームがいるから、この地域が良くなった」と言われるような存在になるのが目標です。

DXとは「会社の未来」―今いる人を大切にするデジタル変革

―最後に、まだデジタル化に踏み出せていない企業へメッセージをお願いします。

私にとってDXとは「会社の未来」そのものです。ただ、いくらIT化しても、従業員が不満だったら意味がありません。

大切なのは、まず自社に合った変革の形を学ぶこと。そして何より、「今いる人」を大切にすることです。

新しい人を高い給料で採用する前に、今頑張ってくれている社員の頑張りに報いる。そのためのデジタル変革でなければ、会社は成長しない。

DXは、今いる社員とその家族を幸せにするためのものなんです。

四日市事務機センターさんの会社見学は大歓迎だそうです!下記よりお申込みください。

会社情報

会社名株式会社四日市事務機センター(YONJIMグループ)
所在地三重県四日市市日永西2丁目18番地7号
業種卸売業、小売業
事業内容・クラウド活用とDXでオフィスの働き方ソリューションの提供
・セキュリティソリューションの提供
・オフィス関連のハード・ソフト販売、修理・保守・管理
従業員数34名(グループ全体48名)
ホームページhttps://www.yj-c.co.jp/
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